■Interview with Michael Pinella (Symphony X) Feb 2003

新作の”The Odyssey”について何か仰りたいことはありますか?
「The Odysseyは・・・そうだね・・・Symphony Xのニューアルバムで、良い出来だよ。今回は少しルーツに戻りたかったから、新作では新しいものと古いものが混ざり合っているんだ。明らかにヘヴィなものもあるけど、ニューアルバムは僕らの全てを含有するような・・・ 僕達はメタルを聴いて育ったから、そういうメタル的な部分があるのは間違いなけど、それと同時にプログレ的な側面もあるんだ。」
私はある意味でよりグルーヴが強調されているように感じました。特にギターは・・・
「ああ、その通りだね、リフは素晴らしいね。とてもグルーヴがあって、すごく良いね。」
では、どちらかと言うとバンドの進化みたいなものですか?
「いや、決して進化というものじゃないよ。原点への回帰のような・・・作曲とかの点ではなくて、単に回帰しているだけなんだ。」
原点回帰ですか?
「そう、原点回帰だよ!」
これからもバンドはこの方向に進んでいくのですか?
「その・・方向性については分からないよ。僕達は良い曲を書くのが好きなだけだし・・・ ある意味そういう針路をとることになるだろうけど、僕達はただ1つの方向に進むことはないだろうね。僕に言えるのは、プログレッシヴであると同時に、よりメタル的な方向に進んでいくだろう、ということだけだよ。だから次のアルバムがどういうものになるかということは分からない。」
ということは、あなたは曲が出来上がった後になって、「ワオ、これはグルーヴィな曲だ」だと分かったわけですか?
「そうなんだ、このCDではそんな感じだったよ。僕達は”V”をコンセプトアルバムに仕上げ、またそれに多様性を持たせたということは分かっているけど、あのアルバムの大部分はプログレッシヴな要素で成り立っていたように思う。だから今回はそれとは少し違ったものにしたかったんだ。で、そういった感じで出来上がったんだよ。」
今まで同じ事を何度もやらないように気をつけた、ということはありますか?それとも新しいものは自然に生まれてくるのですか?
「いつも自然に生まれてくるわけじゃないよ。そう上手くは行かないね。新しいアルバムを作るときは、僕達は常に以前よりも良いものにしようとしているんだ。かつ、違ったものにね。だから似たような曲を書かないようにするのは大変だよ。」
”Awakenings”では面白いジャズパートがありますが・・・
「どの部分?中盤のセクションのこと?」
そう、それです。
「ああ、中盤の全体にピアノプレイがあるね。少しジャズっぽいけど、あれは僕の影響なんだ。」
ドラマーのJason Rulloもジャズが好きなんですよね?
「そうだね。」
Symphony Xでジャズをプレイしたことはありますか?
「いや、それほどやったことはないよ。繰り返しになるけど、ジャズには単に影響を受けた、というだけでね。そしてそれが何らかの形で曲の中にも現れてくることになるだろう。僕は色々な音楽からたくさんの影響を受けているんだ。ほら、(曲中に)あらゆるメタルが登場するようにね。」
あなたが教会で演奏していた、というのを聞いたことがあるのですが・・・
「ああ、長い間ずっとやっているんだ。」
曲の最中にクレージーなソロとかは無いのですか?
「(笑)ああ、そういうのは無いね。」
今でもそれを続けているのですか?
「そうだよ。」
メンバーの皆さんはSymphony Xだけでは食べていけないのですか?
「そうなるように皆努力しているよ。ずっとハードな状態が続いているけどね。僕達は1994年から一緒にプレイしているけど、最初の5年はツアーをやらなかったんだ。1998年の日本ツアーが最初なんだよ。」
それにアメリカでSymphony Xのアルバムが出てませんでしたからね・・・
「そうなんだ。”V”がアメリカで初めてリリースされたアルバムだったからね。もちろん今では全アルバムがリリースされているけど。」
近いうちにSymphony Xで食べていけるようになりそうですか?
「そうなって欲しいね。本当に。」
”Odyssey”がどれくらい売れたかご存知ですか?
「いや、まだ知らない。2週間前にリリースされたばかりだから。どういう方法でその数字を出すのか知らないけど、発売からある程度時間を置かないと信頼できる数字を出せないと思う。とは言うものの、新作について良いこともたくさん聞いてるよ。」
それは良かったですね。私もニューアルバムの成功を願ってますよ。私達はこれからもあなたのジャズプレイを聴くことができるのでしょうか?Michael Romeoのソロのようなものを。
「可能性はあるよ。誰でも影響を受けた音楽というものがあって、常にそれは何かの形で現れるんだ。」
それをどのように活用しているのですか?メンバーにはそれぞれのそういった特性がありますが、どういう手法で共通の目標にたどりつくのですか?
「それが難しいところで、3rdアルバムの”Divine Wings Of Tragedy”まで僕達は独自のサウンドを確立できなかったように思う。そこで全てが噛み合ったんだ。それまでは全くそういうものは存在しなかったからね。でも、”Divine Wings”でやっとそれが形になった。」
これまで一緒に曲を作っていて、意見の不一致とかはありましたか?例えばあなたに誰かが「いや、それは良くない」と言ったりとか。
「そういうことはしょっちゅうあるよ。でもそれは良いことなんだ。全員の集中力を保ってくれるからね。皆で曲を作っていて、僕が他のメンバーが気に入らないものをプレイした時は、他の曲に取り掛かるんだ。つまり良いアイディアが思いつくまで取りあえずその曲は保留しておくんだよ。そうすれば誰かが誰かに腹を立てるということは起こらないからね。僕達は常に作業を楽しみ、また良い作品を作ることを心がけているんだ。」
インターネット上で、特にギターに関してですが、ニューメタルの影響についてのコメントをいくつか目にしましたよ。
「ニューメタルの影響だとは言わないよ。くどいけど、僕達は良い曲を書くために頑張っているんだ。どのようなものを曲が必要とするにせよ、僕達は知恵を絞ってそれを生み出して行くだろうね。」
どうして”Masquerade”をボーナストラックにしたのですか?
「あれはRusselのヴォーカルで録り直したものだからだよ。優れた曲だからヴォーカルがRusselのものを作ることに決めたんだ。あの曲をもう少し強力なものにする、といった目的でね。」
1stアルバムを全部レコーディングし直すということは検討しましたか?
「既にそういう話は出ているよ。記憶が確かじゃないかも知れないけど、昨日3年ぶりにあのアルバムを聴いたところなんだ。僕達は再レコーディグについて考えてみたよ。僕もあの中から2,3曲やり直してみても良いかなと思ったし。」
どういう経緯でオフィシャルサイトでMP3を公開することにしたのですか?
「実際のところ、僕達は直接関わっていない。僕達はあれがどのような感じの作品になるのかをファンに知ってもらいたかったからなんだ。単にちょっとしたプロモーションが目的だと思う。」
概してあなた達はインターネットでMP3を公開することに反対の側だと思っていたのですが。
「その・・オフィシャルサイト上で、かつ僕達がOKを出せば問題無いよ。誰もがインターネット上で何でもアップロードやダウンロードできるというのであれば問題だけどね。僕達はブートレッグには反対だけど、オフィシャルサイトでやっているのはプロモーションのためなんだ。」
あなたが「短い曲よりも、長くて叙情詩的な曲のほうが書くのは簡単だと思う」と言っていたと聞いたのですが。
「ほら、短い曲を書くほうが難しいこともあるんだよ。普通僕達が曲を書くときは、ストーリーラインを最初に設定するんだ。だから3分という長さにアイディアを全部詰め込むのは本当に難しいね。そういうわけで、作業自体は大変になるけど、大抵は長い曲のほうが短い曲よりも多少楽に出来上がるんだ。過去に2分の曲をいくつか書いたことがあったけど、僕達はそれらの出来に満足できなかったしね。」
現在ツアー中だそうですが、そちらでの様子はどうですか?
「そうだなぁ・・ヨーロッパとは違う、ということは確かだよ。でも今のところかなり上手くいっているよ。こっちのファンもクールなんだ。」
Blind Guardianとはどんな感じでやってますか?
「ああ、彼らは本当に良い人達だよ。」
彼らとは良く話をしたのですか?
「いや、そんなには。彼らとはバスが別々だからね。彼らはアトランタのProg Powerでプレイしていたから、モントリオールに行くまで彼らには会えなかったんだ。でも彼らは良い人達だよ。」
彼らの音楽は好きですか?彼らのショウは見ましたか?
「こないだのやつを少し観たけど、とても良かったよ。彼らが長い間やってきたのは知っていたけど、曲のほうはあまり聴いたことが無かったんだ。」
Symphony Xでは、曲を書く手順とはどういうものですか?Michael Romeoがメロディを全部書いて、それからメンバー全員で組み立てていくのですか?
「さっきも言ったけど、プロセスは毎回バラバラなんだ。製法というものが無いんだ。これまでずっと決まりごとのようなものは無かったよ。」
ソロアルバムを出したいと思ったことはありますか?
「具体的な作業に取り掛かっているわけじゃないけど、そういうことを考え始めているんだ。」
どういうタイプの音楽になるのでしょうか?
「それは分からないな。ちょっと変わったバンド形式のようなものになるだろうね。とにかく良い作品になると思うよ。」
ゲストミュージシャンを起用するのですか?それともあなたが一人で全部のパートを担当するのですか?
「いや、キーボードは弾くけど、他のパートが誰になるかは分からないよ。いずれそれについてじっくり考えなければならないだろうけどね。」
誰と一緒にプレイしてみたいですか?
「誰とプレイしたいかって?」
ええ、そうです。
「バンドとして?それとも僕自身として?」
その両方です。
「ドラムはもちろんTerry Bozzio。彼にドラムを叩いてもらいたいな。ベースはJohn Patitucci。それ以外は分からないなぁ・・・Romeoに頼むかも知れない。」
無難な選択ですね。
「ヴォーカルは要らない。シンガーを上手く扱うのはすごく難しいからね。(※ここで電話越しに後ろで笑い声が聞こえたように思います)インスト曲だけになるだろうな。バンドとしては、今までずっと僕は・・・Deep Purpleは大好きなバンドのひとつなんだ。だからDeep Purple、Kansas、ELPとやってみたいね。」
Symphony Xのアルバムでゲストヴォーカルを起用しようと考えたことはありますか?女性ヴォーカルなどは?
「そういうことは考えなかったよ。確かに僕達は時々そういうものを必要とするような曲を書いたりするけどね。実際に今までの曲の中でも、それをやったらより良い曲になるんじゃないかと思ったものはあるよ。僕達はそうしなかったけど、僕はその結果出来上がった曲を気に入っているよ。」
Russel Allenはそれについてどう感じると思いますか?彼だけでなく他の人も歌う、という意味なんですが。
「別に気にしないと思うよ。うん、彼は平気なんじゃないかな。」
ゲストミュージシャンとして参加したアルバムがありますよね?
「一つだけね。一度だけやったよ。RushのトリビュートアルバムにRomeoと共に参加したんだ。」
”Working Man”ですね?
「そうそう、”Working Man”だよ。」
あれはどうでしたか?
「最高だったよ!」
どういう風に作業をしたのですか?彼らがテープを送ってきたのですか?
「ああ、それを僕達のスタジオで仕上げたんだ。」
他のミュージシャンの曲にソロパートを乗せるのは、Symphony Xの場合とはまた違うものだとは思いませんでしたか?
「そうだね・・・だけどRushのトリビュートだったからそんなに難しいものじゃなかったよ。」
最近買ったCDは何ですか?
「最近買ったCD? ”The Best Of Dio”だね。アルバムは全部持っていたはずなんだけど、どこに行ってしまったのか分からなくなってしまってね。買ったのは2週間前かな。」
他にはどういうものを聴きますか?Symphony Xのメンバーのほとんどは古いものを好むそうですが。
「そうだね。」
新しいバンドで気に入っているものはありますか?
「いや、そんなには。僕はラジオすら聴かないから。だから新しいものは全く聴いていないんだ。」
これからのSymphony Xの予定はどのようなものですか?
「良い曲を書いたりツアーをしたり・・・ただ今やっている事をやり続けて、そういったことをさらに上手くやれるように頑張るよ。また各地を回ってファンの前でプレイすることもね。とにかく前進あるのみだよ。」
ライヴでのファンの反応はここ数日どんな感じですか?
「本当に驚いたね。カナダでプレイしていたんだけど、あそこの観客はアメリカよりも少しヨーロッパに似ていたよ。アメリカではどうなるか分からないけど、きっとクールなものになるだろうと思っている。」
カナダのファンには歌詞を予習する時間があったのでしょうか?
「ああ、そのようだね。」
根強いファンを獲得しているようですね。
「ここでは状況が全く変わってきているんだ。カナダでは2年もすれば全てが新しいものに取って代わられるようだね。」
メタルをプレイするのに疲れて、例えばブルースやジャズみたいな何か別のものをやる日が来ると思いますか?
「いや、ないない、ないよ!」
一生メタルということですか?
「一生メタルだよ!」
もうひとつプレイスタイルを選ぶとすればどうですか?ブルースですか?それともジャズやクラシックとかですか?
「クラシック!」
クラシックなんですか?
「うん、たぶんクラシックはメタルと最もつながりが深いだろうしね。仮に僕達が今やっているような音楽をしていなかったとしても、絶対ブルースとかカントリーはやらなかっただろう。ラップなんかもね。ラップとかヒップホップの類なんていうものはどれも長続きするものではないと思うんだ。今は物凄い人気だけどね。Nirvanaとかもそうだったけど、もうその人気もどこかに行ってしまったし。・・・長続きしなかったよね。これが現在に至るまでのいきさつだよ。ああいうものを維持するのは本当に難しいんだ。ヨーロッパでは、30年続いているバンドが未だにすごい人気だったりする。そういうバンドはヨーロッパではアリーナの様な大きい会場でプレイするのに、アメリカではバー程度のところでプレイしていたりする。」
あなた達がヨーロッパや日本でプレイするとヒーローのように扱われるのに、アメリカでは・・・何の反応もないというのはちょっとおかしいと感じるのではないですか?
「その通りだね。」
とは言え、アメリカにもファンはいるんですよ。少々散らばり過ぎているだけで。
「ああ、それは本当だと思うよ。この国の大きさや、どのくらいの人間が住んでいるのかを考えるとね・・・」
私の方からの質問はこれ以上ありませんが、他に何か仰りたいことはありますか?
「別にないよ。ファンにはすごく感謝しているし、ニューアルバムを気に入ってくれることを願うよ。僕達もそっちに行ってプレイするのを楽しみにしているんだよ! 」
インタビュー原文
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